思い出を巡る

【思い出を巡る】 

推奨人数比 ♂2人 ♀3人 計5人 

※♂1~2人 ♀2~5人 

~20分 

 

孫 ♀ 6歳 

 

祖母 ♀ 63歳 

 

息子 ♂ 36歳 

 

(回想) 

千代 ♀ 11歳 19歳 26歳 

 

寅次郎 ♂ 9歳 17歳 24歳 

 

 

――――――――― 

〔推奨人数比〕 

孫   ♀ : 

祖母  ♀ : 

息子  ♂ : 

千代  ♀ : 

寅次郎 ♂ : 

――――――――― 

〔全キャラ〕 

孫      : 

祖母     : 

息子     : 

千代11歳  : 

千代19歳  : 

千代26歳  : 

寅次郎9歳  : 

寅次郎17歳 : 

寅次郎24歳 : 

――――――――― 

 

 

祖母「お爺さんが亡くなって、私は息子夫婦の家で一緒に暮らすことになった。長年住んでいた家は売ることになり、家の片付けをしに息子と孫が来てくれるそうな・・・」 

 

 

息子「母さん、来たよ」 

 

祖母「あぁ、遠いとこからありがとうね」 

 

息子「じゃあとりあえず、俺は大きい荷物とか運び出してくから」 

 

祖母「助かるよ」 

 

息子「美也子、ばあちゃんの邪魔するんじゃないぞー?んっ、しょっと・・・」 

 

孫「みゃーこ、ちゃんとお手伝いできるもんっ!」 

 

祖母「じゃあ、美也子ちゃんはおばあちゃんと一緒に、2階のお片付けをしようかねぇ」 

 

孫「うんっ」 

 

 

孫「ねぇばーば、じーじ死んで悲しい?」 

 

祖母「そりゃあ悲しいさ。なんでそんなことを聞くんだい?」 

 

孫「だって、ばーばいっつもじーじの文句ばっかりだったから・・・。嫌いだったのかなって・・・」 

 

祖母「あはは、そーだねぇ。あの人は・・・本当にどうしようもない人だったねぇ・・・」 

 

孫「んー?なんだろ、これ・・・。ばーばっ!ゴミが一杯入った缶あったよっ!」 

 

祖母「あぁ、懐かしいねぇ」 

 

孫「これお菓子の袋だよねー。あ、このお菓子知ってるよー。みゃーこも食べたことあるー」 

 

祖母「そういえば、結局食べたことないお菓子ばっかりだったねぇ・・・」 

 

孫「えー?だってこんなに袋あるよ?」 

 

 

―――回想1(千代11歳・寅次郎9歳) 

寅次郎「今日はどっこに行っけるかなー」 

 

寅次郎「お、なんだこの穴・・・?よっと・・・。おぉ・・・すっげーお屋敷!」 

 

千代「だれ・・・?」 

 

寅次郎「えっ!?どこだっ!?」 

 

千代「こっちです」 

 

寅次郎「・・・誰だ?」 

 

千代「こっちが聞いています。あなたは誰ですか。ここは私の家ですよ」 

 

寅次郎「へー。このでっかい屋敷に住んでんのか。金持ちだな!」 

 

千代「どこから入ってきたの・・・。早く出て行かないと怒られるよ・・・?」 

 

寅次郎「どこって、ほら。ここんとこに穴があるだろ?こんなか通ってだよ」 

 

千代「こんなとこに穴なんてあったんだ・・・。知らなかった」 

 

寅次郎「へへんっ。この町のことならオレ様に任せろ。小道という小道まで探検したからなっ」 

 

千代「お父様に見つかる前に。早く戻った方が良いよ」 

 

寅次郎「んー・・・、じゃあこれやるよ。これでオレら友達なっ」 

 

千代「えっ・・・あのっ、これって・・・。お菓子?」 

 

寅次郎「の、袋だな」 

 

千代「ゴミなんて要らないよ・・・。ひどい・・・」 

 

寅次郎「違うって!それ当たり券。お店にもってけば商品と交換できるんだよ。なんも知らねーの?」 

 

千代「食べたことないから・・・」 

 

寅次郎「え?それほんとに言ってるの・・・?駄菓子だぜ?子供ならみんな食べるだろ」 

 

千代「・・・お父様がそんな低俗なものは食べちゃダメって」 

 

寅次郎「ふーん。じゃあまた持ってきてやるよ」 

 

千代「え、ダメだよ。ここに来ちゃ」 

 

寅次郎「またなー」 

 

 

―――回想終了 

祖母「それからたまに忍び込んでは、毎回お菓子の当たり券だけ渡してきたのよ」 

 

孫「それが、この缶の中身?」 

 

祖母「ふふふ。そうね。ほんと、何がしたかったのかしらねぇ・・・」 

 

孫「でも、これだけ当たりがあるのって・・・すごいね」 

 

祖母「そうだねぇ。あの人、運だけは良かったからねぇ・・・」 

 

孫「すごーい。みゃーこ全然当たんないんだよー・・・」 

 

祖母「見つけてくれてありがとうね。これも、何枚かだけにして処分しないといけないねぇ・・・」 

 

孫「えー?捨てちゃうの?」 

 

祖母「こんなにあっても荷物になってしまうからね」 

 

孫「まだこれ使えるのかなぁ・・・?」 

 

祖母「欲しいのかい?」 

 

孫「たぶんお父さんがダメって言うから・・・。みゃーこもっと面白いもの探してくるー!」 

 

祖母「あはは。お片付けなんだけどね、楽しそうだしいいかね」 

 

 

孫「ふー!これで押入れの中は全部だよー」 

 

祖母「すごいねぇ。もう片付け終わっちゃったのかい」 

 

孫「えっへん」 

 

祖母「これは・・・。ふふっ・・・また懐かしいものが出てきましたねぇ・・・」 

 

孫「ばーば?それなーに?」 

 

祖母「これはねぇ・・・」 

 

 

―――回想2(千代19歳・寅次郎17歳) 

寅次郎「なんじゃ、来たんか・・・」 

 

千代「本当に東京さ行くの?」 

 

寅次郎「あぁ。これに乗って、数時間後には東京じゃ。東京は凄い所なんじゃ!人と物で溢れてて、いろんなもんがどんどん進化していくんじゃ」 

 

千代「・・・行ったことないくせに」 

 

寅次郎「だから、今から行くんじゃ!そんで、東京で、でっかい男になるんじゃ」 

 

千代「・・・お父さんと何か話してたでしょ?」 

 

寅次郎「っ!・・・見とったんか。・・・恥ずかしいとこを見せてしもーたな・・・」 

 

千代「ちゃんとは知らないの。何を話してるのかは聞こえなかったから・・・」 

 

寅次郎「千代の親父さんと約束したんじゃ。千代に見合う、一人前の男になるって」 

 

千代「え・・・。どういう事?」 

 

寅次郎「そのために俺は東京行くんじゃ。東京には何でもあるからなー!次に会う頃には、一人前、いや、百人前ぐらいになってるぞ!」 

 

千代「何よそれ、そんな言葉無いわよ・・・」 

 

寅次郎「細かいことはいいんじゃ!こーゆーのは感覚が大事なんじゃ!」 

 

千代「・・・頑張ってきなさいよ」 

 

寅次郎「なぁ、千代・・・」 

 

千代「ほら、もう電車に乗りな。乗り遅れるなんてへますんじゃないわよ」 

 

寅次郎「俺は千代が好きなんじゃ!やけん・・・待っててほしい!5年で絶対成功して帰ってくる。だから・・・」 

 

 

―――回想終了 

祖母「結局7年も待たされたんでしたよね」 

 

孫「ばーば・・・?泣いてるの?どこか痛いの?」 

 

祖母「あぁ・・・、ごめんね。大丈夫よ」 

 

孫「これ指輪・・・だよね?すっごく綺麗・・・。けど指おっきいね。誰のー?」」 

 

祖母「おばあちゃんのよ」 

 

孫「でも、ばーばの指より大きいよ?」 

 

祖母「あの人がね・・・」 

 

 

―――回想3(千代26歳・寅次郎24歳) 

寅次郎「千代・・・ただいま」 

 

千代「お帰りなさい。久しぶりね。もう来ないかと思ったてたわ」 

 

寅次郎「・・・・・・」 

 

千代「だって手紙ばっかりで、全然帰ってこないんだもの」 

 

寅次郎「・・・・・・」 

 

千代「仕事は落ち着いたの?凄く忙しかったんでしょう?課長・・・だもんね」 

 

寅次郎「・・・・・・」 

 

千代「もう、どうしたの?ずっとだんまりで、トラらしくないじゃない」 

 

寅次郎「あ・・・のさ・・・」 

 

千代「なーに?」 

 

寅次郎「親父さんには、ちゃんと認めてもらった。だから・・・」 

 

千代「・・・うん」 

 

寅次郎「・・・その」 

 

千代「・・・・・・」 

 

寅次郎「お・・・」 

 

千代「・・・・・・」 

 

寅次郎「おれ・・・、と・・・その・・・」 

 

千代「もうっ!はっきりしなさいよ!何年待たせたと思ってるのっ!?」 

 

寅次郎「えっ!?ちょっ・・・、いや・・・それは・・・その・・・」 

 

千代「7年よ!な・な・ね・んっ!・・・あんたが待っててって言ったから。もうすっかりおばさんよ・・・」 

 

寅次郎「悪かった!・・・来るのが、怖かったんだ。・・・待ってないんじゃないか。俺のことなんて忘れてるんじゃないかって・・・」 

 

千代「・・・手紙に書いてたでしょ」 

 

寅次郎「・・・そうだけど」 

 

千代「ねぇ。最後ぐらいちゃんと男らしく決めてよ」 

 

寅次郎「・・・あぁ。俺、ちゃんと東京で一人前になった。約束よりは遅れちまったけど・・・、俺と結婚してくれっ!」 

 

千代「・・・待たせ過ぎよ、ばか」 

 

寅次郎「えーっと、これ・・・その・・・指輪、なんだけど」 

 

千代「っ!・・・ほんとに?」 

 

寅次郎「どんなのがいいかわかんなくて・・・、店で一番いいやつ買ってきた・・・」 

 

千代「貰っていいの?」 

 

寅次郎「貰ってくれなきゃ困る」 

 

千代「ありがとうっ。・・・・・・あれ?」 

 

寅次郎「ど、どうした?」 

 

千代「これ・・・誰のサイズ?」 

 

寅次郎「あ、それな。サイズとか言われてわかんなかったから。たぶん大丈夫だと思って、俺に合わせといたんだ。同じ人間なんだし、大体同じだろ?」 

 

千代「ばっかじゃないのっ!?」 

 

 

―――回想終了 

孫「えー!途中まですっごくキュンキュンしたのにー!じーじダメダメすぎるー!」 

 

祖母「ほんとよね。・・・指を通したのはその時だけよ。だって、簡単に指から抜けちゃうんだもの」 

 

孫「女の一番の幸せの瞬間なのにー!」 

 

祖母「あはは。美也子ちゃんは好きな男の子とかはいないのかい?」 

 

孫「いるよー。でもね・・・恥ずかしくなっちゃうから、全然話せないの・・・」 

 

祖母「そうねぇ・・・。男の人はいつまでたっても子供だからね。女の方がしっかりしなきゃだめよ?」 

 

孫「えー。でもじーじみたいなのはやだー」 

 

祖母「あらら。きっと今頃天国で泣いてるわね」 

 

 

 

息子「よしっ。とりあえずこんなもんかな。母さん、美也子。片付けはどんな感じだー?・・・聞こえてないのか?」 

 

孫「これパパー?」 

 

祖母「えぇ、そうよ。たしか幼稚園のお遊戯会の時かねぇ」 

 

孫「ちっちゃくて可愛いね。今と全然ちがーう」 

 

祖母「昔はとっても可愛かったのよ?近所でも有名だったわ・・・」 

 

孫「今のパパからは想像もできないけど、ほんとにこの写真の子がパパなの?えー・・・」 

 

息子「おい、母さん。何やってるんだよ」 

 

祖母「あら、下の片付けは終わったのかしら?」 

 

息子「終わったよ。・・・って、それ俺のアルバムじゃないかっ!」 

 

孫「ちっちゃいパパ可愛いね!」 

 

息子「閉じなさい。まだ片付け終わってないじゃないか」 

 

祖母「ごめんなさいね。ちょっと懐かしくなってしまってねぇ」 

 

孫「・・・ごめんなさい」 

 

息子「これは俺が片付けておきます」 

 

孫「だめー!後で見るのー!」 

 

息子「見なくていい」 

 

 

祖母「お爺さん。・・・私はとても、幸せでしたよ」 

 

 

 

 

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