好きな肉料理はなんですか?

【好きな肉料理はなんですか?】 

♂2人 ♀0人 計2人 

~15分 

 

ウィル ♂ 34歳 

レオンの父親。 

連続殺人犯であり、食人鬼。 

殺した相手の肉を食べる。 

 

レオン ♂ 14歳 

少し大人びている少年。 

父親の殺しを手伝っている。 

 

男 ♂ 

殺されて食べられる 

 

 

※『』は電話越し 

―――――――――――― 

ウィル   ♂ : 

レオン・男 ♂ : 

―――――――――――― 

 

――――チャララララン(男のケータイの着信音) 

男「はい?どちらさまですか?」 

 

ウィル「『初めまして。少し質問しますね』」 

 

男「は?いきなりなんですか?」 

 

ウィル「『あなたの好きな肉料理はなんですか?』」 

 

男「いい加減にしろ!悪戯なら切るぞ!」 

 

ウィル「『いいから答えてください。あなたの好きな肉料理は(なんですか?)』」 

 

――――ツーツーツー(通話終了) 

男「なんなんだまったく!訳が分からない・・・なっ!?」 

 

――――チャララララン(男のケータイの着信音) 

男「なんなん(だ!お前は!誰なんだ!?)」 

 

ウィル「『好きな肉料理はなんですか?』」(被せて) 

 

男「あーもうわかった!ステーキだ!これでいいだろう?もうかけてくるな!!」 

 

ウィル「『ありがとう・・・ステーキかぁ・・・いいねぇ・・・。』じゃあ・・・ここが一番おいしいかな?」 

 

男「っ!!!ぐぁぁぁああああああ」 

 

ウィル「美味しいそうな血の色だねぇ・・・。じゅるり(舌なめずり)」 

 

男「ぐあぁぁ・・・。なんだ・・・おまえ・・・」 

 

ウィル「美味しいステーキにしてあげますよ」 

 

男「がああああぁぁああっ――――」 

――――ドサッ 

 

ウィル「食材調達完了。続いて料理開始・・・」 

 

ウィル「男の一人暮らしにしては調味料がそろっているな・・・。こんなやつでも料理はするのか」 

 

レオン「ははっ!何言ってるのさ。父さんだって料理してるじゃないか?」 

 

ウィル「おっと、それもそうだったな・・・。じゃあ、レオンにはこれをしてもらおうかな」 

 

レオン「いいよ。ところで、今日はなんでこの人にしたの?」 

 

ウィル「ん?特に理由なんかないさ。一人暮らしで、他人との交流も少ない。都合が良かっただけさ」 

 

レオン「ふーん・・・。美味しいの?」 

 

ウィル「そいつは喰ってみないとわからんな。少しは鍛えているみたいだし、肉の味はしっかりしてそうだぞ。最近は若い女ばかりだったからな」 

 

レオン「脂がのってて美味しいんじゃなかったの?」 

 

ウィル「同じものばかり食べていたら飽きるってものだ。よし、完成だな」 

 

レオン「僕はサラダだけでいいよ」 

 

ウィル「なんだレオン、今日も食べないのか?」 

 

レオン「うん。僕はまだ食べないよ」 

 

ウィル「そうか?残念だな・・・。じゃあ次は、レオンの食べたい人にしようか」 

 

レオン「んー・・・考えとくよ」 

 

ウィル「いただきます。ガツガツガブガブジュルリ(勢いよく食べる音、舌なめずり)」 

 

レオン「父さん・・・、もう少し綺麗に食べなよ」 

 

ウィル「あぁ・・・一ヶ月ぶりの人の肉だったからな・・・。ついかぶりついてしまったよ・・・。すまんすまん」 

 

レオン「そんなに美味しかった?」 

 

ウィル「あぁ。なかなかに悪くない・・・ガブ・・・クチャクチャ・・・ゴクン(咀嚼音)」 

 

レオン「父さんってさ、なんで人を食べるの?」 

 

ウィル「なんだ?急に。前にも話したことあるだろう?」 

 

レオン「うん。少しだけ聞いたことあるよ。確か初めては、僕の母さんなんだよね?」 

 

ウィル「あぁ・・・。彼女は最高に旨かった・・・。俺の食べてきた物の中で一番だ・・・」 

 

レオン「好きだったんじゃ、ないの?」 

 

ウィル「大好きだよ。あの頃と変わらず・・・今でも愛しているさ」 

 

レオン「じゃあなんで殺したの?」 

 

ウィル「んー・・・そうだなぁ・・・。レオン」 

 

レオン「ん?」 

 

ウィル「明日誕生日だろう?お前いくつになった?」 

 

レオン「明日で15だよ」 

 

ウィル「15か・・・。もうそんなに経つのか・・・」 

 

レオン「僕が生まれた一か月後に母さんを殺したんだよね?」 

 

ウィル「そうだ・・・。少し俺の昔話をしてやろう。聞きたいか?」 

 

レオン「ほんと!?父さん全然教えてくれなかったから・・・。母さんのことも教えてよっ!」 

 

ウィル「あぁ・・・。もちろんだとも。まずは・・・そうだな・・・。俺が死に初めて触れたのは、10歳の時だった」 

 

レオン「誰かを殺したの?」 

 

ウィル「いや、その時はまだだ。窓にカラスがぶつかったんだ。そして、死んだ」 

 

レオン「窓に?バカな鳥もいるんだねww」 

 

ウィル「そうだな。その時まで俺は、生き物の命は大切で尊いものだと教えられていた。しかし、命は簡単に終わる。そう思った」 

 

レオン「ん?どういうこと?」 

 

ウィル「あぁ・・・。お前は知らないか。生き物を殺すことはな、してはいけないことになっているんだ」 

 

レオン「え?なんで?」 

 

ウィル「さぁな。俺にもわからん。だが、みな口をそろえてそういうんだ。おかしいだろう?」 

 

レオン「殺さなくても勝手に死ぬのにね?何が違うんだろうね」 

 

ウィル「あぁ・・・だから俺は、生き物を殺してみることにした。そうすれば何かわかるかと思ってな」 

 

レオン「何を殺したの?」 

 

ウィル「カラスやハト、猫や犬、殺せそうな生き物は殺してみたよ」 

 

レオン「へー・・・。それで?何かわかった?」 

 

ウィル「いや・・・。思うことは、もっと殺したい。という欲求だけだった」 

 

レオン「そう・・・なんだ・・・」 

 

ウィル「そして15の時。俺は自分の欲望を抑えきれなくなった。人を殺したいという欲望をな」 

 

レオン「それは聞いたよ。父さんの両親を。僕からしたら、おじいちゃんとおばあちゃんだよね」 

 

ウィル「これは話していたか。その通りだ」 

 

レオン「どうだった?人間を殺すのは違った?」 

 

ウィル「同じだったよ。もっと殺したいと思うだけだった」 

 

レオン「ふーん・・・」 

 

ウィル「そして俺は捕まった。当たり前だ、何の計画もなく殺したんだ。殺しが許されない世界でな」 

 

レオン「あー・・・それで、施設に入れられて、母さんと出会うんだよね?」 

 

ウィル「なんだ、知っているじゃないか」 

 

レオン「ところどころだよ。いいじゃん、話してよ」 

 

ウィル「仕方ないな・・・。彼女は施設の管理人の娘だった。気立てが良く、いろいろと俺の世話をしてくれた」 

 

レオン「綺麗な人だった?」 

 

ウィル「それはもちろんだとも。初めてあった俺は、女神に出会ったのかと思ったさ」 

 

レオン「女神ってwwなんか父さんらしくないねww」 

 

ウィル「今思えばそうだな。だが、その時は本当にそう思った。それぐらいに、彼女は美しく、輝いていた」 

 

レオン「いいなぁ・・・僕も会ってみたかった・・・。って、僕の母さんかwwんー・・・」 

 

ウィル「はじめはずっと俺の片想いだったさ。彼女は俺に殺しはダメだと何度も言った。俺がなぜ?と聞くと、命を粗末にしちゃいけない、と」 

 

レオン「ふーん」 

 

ウィル「だから、俺は殺しはやめた。どうしても彼女に好かれたくて」 

 

レオン「なんだか、親の馴れ初めを聞くのって恥ずかしいね・・・」 

 

ウィル「お前が聞きたいと言ったんだろう?」 

 

レオン「僕の知らない父さんと母さんだもん!もっと聞かせて」 

 

ウィル「はぁ・・・。続けるぞ」 

 

レオン「うんっ」 

 

ウィル「それからしばらくして、俺は彼女と付き合うことができた。真面目に頑張っている俺に惚れてくれたらしい」 

 

レオン「やったじゃん!」 

 

ウィル「・・・ゴホンッ!まぁ、その、なんだ。それからしばらくして彼女は子供を・・・。レオン、お前を身ごもった・・・」 

 

レオン「・・・父さん?」 

 

ウィル「俺は今まで以上に頑張った・・・。そうして・・・、お前が生まれた」 

 

レオン「泣いてるの?」 

 

ウィル「ん・・・。少し思い出してしまった・・・すまない」 

 

レオン「別にいいんだけど・・・」 

 

ウィル「俺はその時彼女と、そしてお前を、心の底から大切だと思った。愛しいと」 

 

レオン「えへへっ、なんだか照れるな」 

 

ウィル「そして同時に、殺したいと・・・、強く思った」 

 

レオン「え?」 

 

ウィル「だが、俺は彼女と約束をしていた。無駄な殺しはしない、命を粗末にはしないと・・・」 

 

レオン「・・・・・・」 

 

ウィル「だから、俺は・・・。彼女を殺し、食べた。食べることで、無駄にせず、粗末にもしなかった」 

 

レオン「僕は・・・。僕は・・・なんで殺さなかったの?」 

 

ウィル「お前は・・・。彼女を愛している証だからだ。お前を育てることが俺の愛だと思った」 

 

レオン「あはは・・・。さすが父さん・・・。狂ってるね」 

 

ウィル「そうだな、狂った俺なりの愛し方だったんだ」 

 

レオン「それで、それからも殺して食べて・・・?」 

 

ウィル「そうだな。初めは、その時に食べた彼女の味を忘れられなくて・・・」 

 

レオン「そっか。あっ、僕お腹減ったから何か買ってくるよ」 

 

ウィル「ん?そうか・・・、気を付けろよ」 

 

――――ギーバタンッ 

ウィル「はぁ・・・。15年か・・・。一体俺は何人食べたんだろうか・・・。きっと今の俺は・・・、彼女の望んでいた姿ではないんだろうな・・・」 

 

ウィル「けど、俺の中にあるこの欲望は・・・抑えきれないんだ・・・。殺したいという・・・」 

 

ウィル「そして・・・、彼女を食べた時に知った。人の肉の何とも言えない美味しさ・・・」 

 

ウィル「彼女の味を超えるものはなかったがな・・・。愛していたから・・・こそ・・・、なんだろうな・・・。あの味は・・・」 

 

――――ピロリロリロリン(ウィルのケータイの着信音) 

ウィル「ん?レオンか。どうした?」 

 

レオン「『今買い物してるんだけどさー。父さんはなにか要るものある?』」 

 

ウィル「あー・・・。そうだな。ビールでも買ってきてくれるか?」 

 

レオン「『他には?』」 

 

ウィル「他には・・・」 

 

レオン「『そういえば父さんってさ、相手の好きな料理にしてしか食べないだろ?』」 

 

ウィル「ん?あぁ・・・そうだな。それが俺の殺しのルールだからな」 

 

レオン「『父さんの好きな肉料理って何なのかなって』」 

 

ウィル「『ん・・・考えたこともなかったな・・・』」 

 

レオン「『何もないの?』」 

 

ウィル「んー・・・そうだな。彼女の得意料理だったビーフシチューは、好きだったな・・・」 

 

レオン「『へー。ビーフシチューかー。いいね!」」 

 

ウィル「あぁ・・・。俺の初めての料理もビーフシチューだった。ずっと忘れられない味さ」 

 

レオン「『そーだったんだ・・・。じゃあ』僕にとっても思い出の味になるよ。きっと」 

 

ウィル「レオン?!いつのッ―――があぁぁぁあああああ」 

 

レオン「僕が初めて食べるのは、父さんって決めてたんだ・・・」 

 

ウィル「レ・・・オン・・・」 

 

レオン「まだ息があるんだね・・・。ほら、鐘がなってる。今日で僕は15歳だ・・・。父さんが初めて人を殺したのと同じ、15歳だよ」 

 

ウィル「ヒュー・・・ヒュー・・・」 

 

レオン「喉を切ったからもう喋れないね。大丈夫。すぐに楽にしてあげるから。ずっと僕は待ってたんだ・・・この時を・・・。・・・さようなら、父さん」 

 

――――ドサッ 

レオン「食材調達完了・・・。美味しいビーフシチューを作ろうね・・・」 

 

 

 

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