オルゴールの音色に乗せて
【オルゴールの音色に乗せて】
♂1人 ♀1人 計2人
~20分
勇哉 ♂ 19歳
やんちゃで少し口が悪い。
バイクが好きで、中卒で働いている。
給料のほとんどはバイクに消えていくほどのバイクバカ。
凪 ♀ 18歳
世間知らずな女の子。
だいたい実年齢より下に見られる。
元気いっぱいで、明るい印象だが・・・?
※ラストが考え方・感じ方で別れると思います。
演じる前に方向性を決めると演じやすいかと思われます。
―――――――――――
勇哉 ♂ ;
凪 ♀ :
―――――――――――
勇哉「久しぶりーって・・・あれ?いない?今日って検査の日だったっけかな・・・」
凪「女の子の部屋を物色とは、よろしくない趣味だなぁ。勇哉くん」
勇哉「あっ、すみません。別に何かをしてたってわけじゃ・・・って凪かよ」
凪「凪かよ、だなんて失礼だなー!私に会いに来てくれたんじゃないのー?」
勇哉「・・・じゃあ会ったし帰るわ」
凪「・・・うぅ、ぐすん。そーやって勇哉くんはいじわるするんだ・・・」
勇哉「先に悪戯仕掛けてきたのはお前の方だろ・・・」
凪「ぐすん・・・ぐすん・・・」
勇哉「あ゛―!もう、わかった。わかったから泣き止めって。凪に会いたくて会いに来ました。だから帰りません!」
凪「えへへ。そーんなに私に会いたかったのかー。勇哉くんは可愛いなぁ♪」
勇哉「くそっ・・・。惚れた弱みってやつか・・・?」
凪「私も勇哉くんに惚れてるよー?大好きだもん」
勇哉「っ///あーっ!もう!・・・で、体調はどうなんだよ?良くなってんのか?」
凪「うんっ!ほらっ、元気でしょ?」(ベットの上で飛び跳ねるように)
勇哉「ベッドの上ではしゃぐな。元気ならとっとと退院しろよー?バイク乗りたいんだろ?」
凪「えー?勇哉くんの運転、信じれるかなぁ?」
勇哉「俺の運転技術は一流だぜ?」
凪「あれー?事故で入院してきた人は誰だったかなー?」
勇哉「だーかーらー!あれは居眠り運転の車が突っ込んできたからだって・・・」
凪「ふふふっ。分かってるよ。もう何回も聞いたもん。ごめんね?もうちょっと待っててほしいな、だめ?」
勇哉「はぁ・・・。ちゃんと待ってるだろ。ったくよぉ、凪の病気は身体じゃなくて意地の悪さなんじゃねーの?」
凪「むー。違うもん!イジワルじゃないもん!」
勇哉「じゃあなんでずっと入院してんだよ?」
凪「だーめ。秘密だもん。良くなったら教えてあげてもいいよー?」
勇哉「ずっと秘密だなー。まぁ無理には聞かないけどさ」
凪「女の子は秘密が多い方が魅力的でしょ?」
勇哉「はいはい」
凪「ながしたー!ひどーい!」
勇哉「あのなぁ・・・」
―――回想
勇哉M「凪と初めて会ったのは、半年ほど前のことだった」
凪「また救急車だ・・・。今日も大変そうだね」
勇哉M「俺はバイクを運転中、車とぶつかった。そして、この病院に運ばれた」
凪「毎日いろんな人がやってきて、良くなって帰っていく・・・。なのに私は、ずっとここにいるね」
勇哉M「バイクが見るも無残な姿になるぐらいには大きな事故だったようだが、幸いなことに命に別状はなかった。ただ、脚の骨が折れていて1ヶ月ほど入院することになった」
勇哉「入院生活とか初めてしたけど・・・、想像以上に暇だー!・・・なぁにすっかなー。とりあえず売店でも行くか・・・?」
勇哉「よっと・・・。へへっ、最初は松葉杖とか慣れなかったけど今じゃどうよ。ほらっ♪」
勇哉「って、俺は一人で何やってんだか・・・。看護師に見つかったらめんどーだし、ササッと行くとすっか」
凪「ねぇ」
勇哉「んっ!?だ、誰だよお前・・・」
凪「何してるの?」
勇哉「何って、暇だから売店でも行こうかなって思ってよ」
凪「じゃあなんで回ってたの?」
勇哉「っ!か、かんけーねーだろっ!・・・そもそもお前誰だよ?」
凪「私は凪。あなたは、勇哉さんでしょ?」
勇哉「あ?なんで俺の名前知ってんだよ・・・」
凪「そこ、ベットのところに名前書いてあるよ」
勇哉「ん?・・・あぁ。で、なんか用か?」
凪「暇なら私の部屋に来ない?」
勇哉「は?なんだお前。俺はガキに興味ねーんだよ。ったく、最近のガキは変にマセテやがるから面倒だぜ・・・」
凪「お話し相手になってほしいってお願い、そんなにおかしいかな・・・?」
勇哉「・・・話し相手?あー・・・まぁ、別にそれぐらいなら俺も暇だしいいけどよ。なんでお前の部屋なんだよ?」
凪「だってここ6人部屋でしょ?隣、おじいちゃん寝てるから。うるさくしちゃうと迷惑かなって」
勇哉「なに?お前、個室なの?」
凪「お前じゃないよ。私は凪だよ」
勇哉M「いきなりやってきて、話し相手になってほしいとか。わけのわかんないガキだな、まぁ暇つぶしにはいいか、ぐらいに思ってた」
凪M「それから勇哉くんが退院するまで、毎日何時間もお話して。笑って、怒って、泣いて、頭撫でられて・・・」
勇哉M「気が付いたらいつも凪のことを考えるようになって、退院してからもたまに話に来るようになった」
凪M「勇哉くんの話が好きだった。私の知らない世界をいっぱい知ってて、説明は下手だけどちゃんとわかるまで教えてくれるから」
勇哉M「凪は小学生のころからずっとこの病院にいるらしい。だからなのか、ガキかと思っていたが実は俺と1つしか違わなかった」
―――回想終了
凪「あのね、勇哉くん。実はね・・・」
勇哉「ん?なんだよ・・・やけに溜めるな」
凪「外出許可貰っちゃったっ♪」
勇哉「え?ほんとか?」
凪「うんっ!お医者さんが今度1日だけ出掛けてきてもいいって!」
勇哉「やったじゃん。じゃあ退院ももうすぐかもな」
凪「ほらねー?だから言ったでしょー」
勇哉「じゃあ、どこ行こうか?」
凪「えー?せっかくのお出かけなのに勇哉くんと行くのー?」
勇哉「え?あれ・・・ごめん。てっきり俺・・・。勘違いしてた・・・?」
凪「嘘だよっ!ジョーダンに決まってるじゃん。勇哉くんと遊びに行きたいとこ、いっぱいあるんだもんっ」
勇哉「またお前はそーゆー・・・」
凪「いつも勇哉くんがするからお返しだもんっ。でねでね、最近おっきなショッピングモールできたでしょ?そこに行きたいのっ!」
勇哉「あー、再開発で最近賑わってるとこか・・・」
凪「だめ?」
勇哉「んにゃ、いいよ。じゃあ、そこ行くか」
凪「やった♪じゃあお母さんに新しいお洋服買ってもらわなきゃ・・・、それにお化粧も覚えないと・・・」
勇哉「おいおい、服買ったりしに行くんだろ?なんで先に買うんだよ・・・」
凪「女の子にはいろいろあるのっ!」
勇哉「9時半か・・・ちょっと早く来すぎたな」
勇哉「来週の日曜日10時に駅前・・・で合ってたよな。ったく、なんで駅で待ち合わせなんだー?別にバイクで迎えに行くのにさ・・・」
凪「だって、この方がデートらしいし、買い物はバイクより電車の方が荷物とか気にしなくていいでしょ?・・・それに、病院からなんてやだもん」
勇哉「っ!凪・・・あ、お、おはよ」
凪「おはようっ、勇哉君♪」
凪「勇哉くーん?どうしたの?」
勇哉「あぇっ?えーっと・・・その、なんだ・・・。いつもと違って凄い可愛いから・・・」
凪「ほんと?可愛い?」
勇哉「服がなっ!服が可愛い」
凪「・・・ふーん。勇哉くんはツンデレだからなー。でも、今日ぐらいはちゃんと聞きたいなぁ?」
勇哉「・・・すごく可愛いよ」
凪「えへへっ。センス良いでしょ?この服も全部自分で選んだんだよー♪お化粧は・・・うまくできなかったから、看護師さんにしてもらったけど・・・」
勇哉「じゃあ、行くか。何時までに帰ればいいんだっけ?」
凪「5時だよー。今が10時前だからいっぱい遊べるねっ」
勇哉「なぁ」
凪「んー?なーに?あっ、これ凄く可愛くない?」
勇哉「俺はこっちの方が好きかな」
凪「えー。勇哉くんセンスなさすぎー」
勇哉「センスなくて悪かったな・・・。じゃなくて、ずっと見てるばっかだけど、買わないの?」
凪「んー、まだ買わないかな。だって、次のお店でもっと可愛いの見つかるかもしれないでしょ?」
勇哉「・・・そーゆーもんなのか?」
凪「そーゆーものなのー、けほっけほっ・・・」
勇哉「凪?大丈夫か?」
凪「んっ・・・はぁ・・・はぁ・・・」
勇哉「おい、どしたっ!?」
凪「お水・・・ほしいな・・・」
勇哉「わかった、すぐ買ってくるから。そこのベンチで休んでろよ」
凪「うん・・・。ごめんね」
勇哉「落ち着いたか・・・?」
凪「うん、もう大丈夫だよ。ちょっと慣れない人込みで疲れちゃったかな?」
勇哉「まだ時間は早いけど、もう帰るか?無理するのは良くないだろうし・・・」
凪「あっ!あのお店良さそう!ほらっ!勇哉くんも、早くっ!」
勇哉「あ、おい!・・・元気そう、だけど。大丈夫なのか?」
勇哉「で、結局俺のTシャツに、俺のパーカーに、俺のマフラーしか買ってないんだが・・・?」
凪「うんっ!やっぱこの方が似合うね!勇哉くんカッコいい!男前!」
勇哉「じゃなくて、凪は買わないのかよ?もう時間あんまりないけど、何軒かならまだ回れるぞ?」
凪「んーん、大丈夫。ほら、帰ろ?今日はすっごく楽しかったよ♪いろんなお店見れたし大満足っ!」
勇哉「なら良いんだけどな。俺もすげー楽しかった。ちょっと疲れたけど」
凪「だねー。私も疲れちゃったー」
勇哉「お前ははしゃぎ過ぎだろ」
凪「だって、初めて見る物ばっかりだったんだもんっ!」
勇哉「まぁ、そっか。そーだよなぁ。でもこれから、もっともっといろんなもの見ていくんだぜ?そんなんで大丈夫か?」
凪「・・・うん。大丈夫だよ!楽しみだねっ」
勇哉「あのさ、これ。・・・凪に似合うと思って、買ってみたんだけど。貰ってくれるか?」
凪「え・・・これって、指輪・・・?」
勇哉「にしたかったんだけど、指のサイズとかわかんなくてさ・・・。指輪のネックレスにしてみたんだ・・・」
凪「・・・んっ・・・んっ」(鼻をすするような音)
勇哉「凪・・・?ごめん、気に入らなかったか?」
凪「ちがうのっ。その・・・凄く嬉しくて、嬉しいのに・・・なんでだろう・・・涙が出ちゃって・・・」
勇哉「なんで泣くんだよ。ったく、ほらハンカチ貸してやるから」
凪「あ、あのね。私も勇哉くんにプレゼントがあるの。貰ってくれる?」
勇哉「ほんとに?マジで?・・・やばい、嬉しすぎる」
凪「そ、そんな大したものじゃないんだよ?ほんと。・・・これなんだけど」
勇哉「ありがとう。これは?」
凪「開けてみて。気に入ってくれると嬉しいんだけど・・・」
勇哉「ん?あ・・・オルゴールか」
凪「うん。私の今一番好きな曲なの」
勇哉「へー・・・。うん、俺もたぶんすきだと思う」
凪「たぶんってなにー?」
勇哉「いや、こーゆー曲ってあんまり聞かないから。でも、うん。好きだよ」
凪「ほんと?よかったぁ。あのね、これから私、その・・・リハビリとか検査とかいろいろあってね。忙しくなるみたいなの」
勇哉「え?あぁ、そーなんだ。そっか、そーだよな。ずっと入院生活だったもんな。じゃあこれからいろいろ頑張んないとだな!」
凪「あ・・・うん。でね、だから・・・えっと・・・、会ったりできなくなっちゃうんだけど・・・。ごめんね」
勇哉「あー・・・そーゆーことか。でも、退院するためだもんな。しゃーねーな。んじゃ、俺も凪に負けないように仕事とか頑張んないとだな!」
凪「うん。頑張ってね。たまにオルゴール聞いて私のこと思い出してくれたらうれしいな」
勇哉「おう!毎日聞くぜ!凪もその指輪見て俺のこと思い出せよ?」
凪「うんっ。絶対大事にする」
勇哉M「凪と初めてのデートをしてから、2ヶ月が過ぎようとしていた・・・」
勇哉M「必死に仕事をする俺の姿を見て認めてもらえたのか、少し大きな仕事を任してもらえる事になった。俺も忙しくなったこともあって、ここ二週間ほどは凪とは連絡を取れずにいた」
勇哉「何回目だろうな・・・このオルゴール聞くの。いや何百回目か?ははっ」
勇哉「ん・・・?やべ、壊れた・・・?」
勇哉M「オルゴールの蓋をパカパカして遊んでいると、底が取れてしまった。そして、一枚の紙が出てきた」
勇哉「ん?なんだこれ・・・便箋?えっと・・・勇哉くんへ」
凪「勇哉くんへ。こんな形での手紙でごめんね。ちょっと大事な話があって・・・。でも、勇哉くんに直接話すのは怖くて・・・。手紙を書くことにしました」
勇哉「凪からの手紙・・・?」
凪「勇哉くんがこれを読んでるのはいつかな?たぶんこれを渡すのはデートの日だから・・・。デート・・・恥ずかしくなってきちゃった。でも、考えるだけでにやけちゃうぐらいには楽しみなんだもん」
勇哉「おいおい・・・、手紙だよな?これ。まったく、何書いてんだか」
凪「えーっと、それでね・・・。大事な話っていうのは、私の病気の事についてなの。ずっと秘密にしてて、ごめんなさい」
勇哉「・・・」
凪「実は私、先天性の心臓病なの。お医者さんからは二十歳まで生きることは難しいって言われてた。それでね・・・、私の心臓・・・もうそんなにもたないんだって。あはは・・・二十歳どころかまだ19にもなってないんだよ・・・?おかしいよね」
勇哉「もたない・・・ってなんだよ・・・。良くなってるんだろ・・・?退院するんじゃなかったのかよ・・・」
凪「勇哉くんに会うまでの私はね。早く死にたい。生きてる意味なんてない。そう思ってた。でもね、勇哉くんと会って、勇哉くんに恋をして・・・大好きになって、ずっと一緒に居たいって思ったの。思っちゃったの・・・。叶うわけないのにね・・・」
勇哉「うそだ・・・。どーせいつものドッキリ・・・だろ?こんな悪戯・・・笑えねーぞ・・・」
凪「勇哉くんは私のこと、どー思ってたのかな・・・。たぶん、最低でひどい女だよね・・・。だって、死んじゃうんだもん。・・・勇哉くんだけ残して。忘れてほしくなくて、ずっと私のこと覚えててほしくて・・・、私の大好きな曲のオルゴールなんて渡すんだもんね」
勇哉「そーだよ!病院に行けばはっきりするじゃん!」
凪「でもね!ほんとは忘れてほしくなんてないんだけど・・・、でも・・・、勇哉くんの重荷にはなりたくないの・・・。勇哉くんには、ちゃんと幸せになってほしい。だからね・・・。私のことは忘れて、良い人見つけてね!」
勇哉「バイクの鍵・・・あったっ!まだこの時間ならギリギリ面会時間に間に合うはず!」
凪「なにもない私に、すっごく楽しい思い出をくれてありがとう。こんな私に恋を教えてくれてありがとう。勇哉くんに出会えて、幸せでした。これから先、勇哉くんに幸せな未来が待っていますように」
凪「さようなら。・・・凪より」
勇哉「おまたせー!」
凪「おまたせじゃないよっ!勇哉君はいきなりすぎるんだよっ!」
勇哉「だって凪に会いたかったから」
凪「もぅ・・・。それは私も会いたかったよー?でも、仕事は良いの?」
勇哉「バックレてきたぜ!」
凪「何やってるのっ!?そんなことしたら怒られちゃうじゃんっ」
勇哉「いや、だってさー。せっかく凪の入院生活が終わったってのに、俺は仕事、仕事、仕事でよー・・・。全然会えないじゃんか」
凪「それはそうだけど・・・でもね」
勇哉「いいからほら、早く乗れよ。今日はどこ行こうか?海?遊園地?あ、温泉とかもいいよな」
凪「温泉って・・・、勇哉君のエッチ。でも、海はいいなぁ・・・」
勇哉「あれれ?凪ちゃんは何を考えたのかな?」
凪「・・・し、しらないもんっ。あ・・・、ねぇ。電話、鳴ってるよ?」
勇哉「ん・・・。気にしなくていいよ。どうせ会社だし」
凪「それなら、なおさら出なきゃダメじゃないの?」
勇哉「良いんだよ・・・。俺は今、凪と居たいんだ」
凪「・・・」
勇哉「わかった。えーっと・・・、ポチポチっと。電源切った。これでもうかかってこないから、気にすることもないだろ?」
凪「ほんとに良いの?今ならまだ、ちゃんと謝ったら許してもらえるかもしれないよ・・・?」
勇哉「大丈夫大丈夫!ほらっ、あれだ。有休ってやつだよ」
凪「・・・わかった。じゃあもう私は何も言わない。せっかく勇哉君と一緒に居れるんだもんっ!おもいっきり楽しんじゃう♪」
勇哉「おう!楽しむぞー!」
凪「おー!じゃあ、海いこー。あ、その前にクレープ食べたいっ!」
勇哉「おいおい・・・いきなりわがままになったなぁ」
凪「んー?何か言ったー?」
勇哉「いーや、なんもねーよ。じゃあ、出発すんぞー」
凪「れっつごー!」
勇哉「あぶねーからちゃんと掴まってろよ?」
凪「はーい。ぎゅー!」
勇哉「胸当たってるぞー?あれか、あててんのよってやつか」
凪「っ///ばーかっ!」
END
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