殺し屋と伝説が終わった日

【殺し屋と伝説が終わった日】 

♂3人 ♀1人 計4人 

~30分 

※この台本は『殺し屋と死にたがり少女』のアナザーストーリーです 

 この台本だけでも楽しめますが、前作を知っておくとより面白くなるかと思います 

 『殺し屋と死にたがり少女』はこちら 

 

 

ラーフ ♂ (20代半ば) 

回想で12歳・15歳・18歳・22歳をします 

 

エリサ ♀ (15歳) 

 

リー ♂ (30代) 

 

浮浪者 ♂ (40代) 

 

男1 ♂ (20代) 

 

男2 ♂ (20代) 

 

リア ♀ (17歳) 

 

―――――――――――― 

ラーフ    ♂ : 

エリサ・リア ♀ : 

リー・男1  ♂ : 

浮浪者・男2 ♂ : 

―――――――――――― 

 

エリサ「ねぇ、ラーフ。次はどこ行くの?」 

 

ラーフ「さぁな。俺に居場所なんてないからな。お前も、俺についてくるって言ったんだ、普通の暮らしなんてできないぞ」 

 

エリサ「そーんなの分かってるよ。私は全然大丈夫だよ。路地裏でも、ゴミ置き場でも寝るもんっ」 

 

ラーフ「・・・はぁ。安いホテルぐらいなら取ってやる」 

 

エリサ「なんで!?大丈夫だよっ」 

 

ラーフ「いろいろあんだよ。黙って従っとけ」 

 

エリサ「ふふっ。ラーフはホントに優しいよね。殺し屋とは思えないよ。あ、でも殺さない殺し屋だから違うのかな・・・」 

 

ラーフ「わけのわからないことを言うな。行くぞ」 

 

エリサ「もぅ!置いて行かないでよっ!行くとこ決まってないんでしょー?」 

 

ラーフ「・・・・・・」 

 

エリサ「ねぇってば!私ね、行ってみたいところがあるのっ!だめかな?」 

 

ラーフ「・・・どこだ?」 

 

エリサ「えっとね、えっとね。このお花畑のところに行ってみたいの」 

 

ラーフ「ん?なんだこの紙・・・」 

 

エリサ「ご自由にお取りくださいってあったから持ってきたの。すっごく綺麗でしょ!ね?お願い!連れて行って!」 

 

ラーフ「あぁ、綺麗だな。ん・・・、ここって・・・」 

 

エリサ「どうしたの?もしかして行ったことあった?」 

 

ラーフ「あぁ・・・、昔ちょっとな・・・」 

 

エリサ「えー!良いなぁ!どうだった?」 

 

ラーフ「悪い・・・。俺が知ってるのは花が咲いている季節じゃなかったからな」 

 

エリサ「あー・・・そっかぁ・・・。見てみたいなぁー」 

 

ラーフ「前に行ってから、もう2年か・・・。そうだな・・・、伝えたいこともあるし、な」 

 

エリサ「ラーフー?聞いてるー?おーい」 

 

ラーフ「エリサ、そこ行ってみるか?」 

 

エリサ「え、ほんとっ!?」 

 

ラーフ「あぁ、少し遠いからな。今日は飯食ったら早いとこ休むぞ」 

 

エリサ「はーいっ」 

 

ラーフM「今の俺を見たら、お前はなんていうんだろうな・・・」 

 

 

 

エリサ「んー、美味しいっ♪あ、ラーフも食べるー?ほら、あーん」 

 

ラーフ「いや、いい」 

 

エリサ「・・・もう。どうしたの?昨日からずっとテンション低いよー?いっつも暗くてちょっと怖いけど、今日はいつもより怖いもん」 

 

ラーフ「なんでもない・・・」 

 

エリサ「お花畑まで遠いんでしょー?そんな暗いとつまんないよー」 

 

ラーフ「・・・・・・」 

 

エリサ「・・・それって、私の名前を呼んでくれないことと関係してる?」 

 

ラーフ「っ!・・・なんでそうなるんだ」 

 

エリサ「なんとなく。・・・ラーフって昔の事全然話してくれないから」 

 

ラーフ「面白い話じゃないさ」 

 

エリサ「時間はいっぱいあるんだし、聞かせてよ。せっかく名前付けてもらったのに、呼んで貰えないの寂しいんだよ?」 

 

ラーフ「・・・はぁ」 

 

エリサ「ごめんなさい・・・」 

 

ラーフ「俺はな、もともと良い所のお坊ちゃんだった。親父は食品メーカーの社長でな。その頃の俺は、お前・・・エリサ・コックスみたいな生活をしていたんだ」 

 

エリサ「え・・・」 

 

ラーフ「お前が会社を継ぐんだからと、いろいろなことをさせられたよ。まぁ、そのおかげで芸達者にはなったがな」 

 

エリサ「エリサと同じ・・・?」 

 

ラーフ「でもな、ある時会社が倒産した。・・・俺が12の時だった。そして、今日を生きることもできなくなった俺の家族は、俺を置いてどこかに消えてしまった」 

 

エリサ「え・・・そんな・・・」 

 

 

 

―――回想1(ラーフ12歳) 

ラーフ「ただいまー。・・・あれ?誰もいない。出かけてるのかな?」 

 

ラーフ「・・・遅いなぁ。もうお外も真っ暗なのに」 

 

男1「なんで電気ついてんだー?ここの住人は出てったはずだよなー?」 

 

ラーフ「お、おじさんだれ・・・?」 

 

男1「あ?誰がおじさんだって?つーか、お前何処のガキだ?」 

 

ラーフ「ここは僕の家だ・・・勝手に入ってくるな」 

 

男1「あー、なるほどな。お前、この家のガキか。ハハハハハ。捨てられたって訳か、可哀想になー」 

 

ラーフ「捨てられた・・・?」 

 

男1「お前の親はな、この家を売って出て行ったんだよ。お前を置いて、な」 

 

ラーフ「う、うそだ・・・。帰ってくる・・・だから、良い子で待ってるんだ・・・」 

 

男1「めんどくせぇ・・・。おい、このガキ何処かに捨ててこい。残った奴はちゃっちゃと仕事済ますぞ」 

 

ラーフ「やめっやめろ!ここは僕たちの家だぞっ!やめろ!はなせっ!勝手な事するな・・・」 

 

 

 

ラーフ「うぐっ・・・ぐすっ・・・。うそだ・・・お父さんが、僕を捨てるなんて・・・。お母さん・・・リア・・・どこに行ったの・・・?・・・ごめんなさい・・・お家・・・守れなくて・・・ごめんなさい・・・」 

 

浮浪者「キミ、大丈夫かい?こんな時間に一人でどうしたんだい?」 

 

ラーフ「やめてっ!?こないでっ!やだっ。やだっ・・・もう僕は、ぼくから・・・なにも・・・とら・・・ないで・・・・・・」 

 

浮浪者「ど、どうしたんだっ・・・。っ!すごい熱じゃないか。キミ、キミっ!しっかりしなさい」 

 

 

 

リー「それで、何処から連れてきたんだ?」 

 

浮浪者「いつもゴミを漁ってる裏路地ですよ。今日は結構大量で、いくつかパンもありましたよ」 

 

リー「あぁ、あの店の裏のところか・・・。で?このガキどうするつもりなんだ?」 

 

浮浪者「えーっと・・・、今にも死にそうだったもんで、つい・・・」 

 

ラーフ「ん・・・んん?」 

 

リー「お?気が付いたか、坊主」 

 

ラーフ「・・・っ!!!だれっ!?やだっ!・・・こっちくんな!お父さんとお母さんを返せよ!」 

 

浮浪者「倒れる前からこんな調子で・・・」 

 

リー「とりあえずは元気そうだな。おい坊主。腹は減ってないか?」 

 

ラーフ「・・・僕をどうする気だ」 

 

リー「はっはっは。お前みたいなガキをどうこうするほど、落ちぶれちゃいないさ。ほらっ、飯だ。その様子じゃ、しばらく何も食ってないんだろ?」 

 

浮浪者「リーさん!それは貴重なパンですよ!?」 

 

リー「あぁ。でも、お前さんが連れてきたんだろ?拾ったもんを勝手に捨てることは、俺たちには許されねぇ。そうだな?」 

 

浮浪者「それは・・・、その通りです」 

 

ラーフ「カビが生えてる・・・。なんだよこれ、こんな汚いの食べれるわけないだろ」 

 

リー「汚いか。そうか。これでも、ここでは一番良い食材なんだがな?」 

 

ラーフ「なんなんだよ、お前ら。こんな変なとこに住んで、薄汚い格好してさ」 

 

リー「なるほどな。お前にはそう見えるのか。じゃあ、今の自分の格好を見てみろ。俺たちより酷いぞ?」 

 

ラーフ「え・・・」 

 

浮浪者「ここは、社会からはみ出した日陰者が住む場所さ。住む場所のない人間が集まって、協力して生きているんだ」 

 

リー「俺には、金持って贅沢な暮らしをしてるやつらなんかより、よっぽど良い暮らしだと思うけどな」 

 

ラーフ「あっ・・・うぅ・・・」 

 

リー「ほら、腹の虫は鳴いてるぞ?それはお前のもんだ。食べるも捨てるも好きにしな」 

 

ラーフ「・・・はむっ。うぇっ・・・まずい・・・」 

 

浮浪者「おいっ!それは俺たちの貴重な食料なんだぞ!?」 

 

リー「ははっ。よほどいい暮らしをしてたんだろうな。ここにはいろんな奴がいる。話したくないなら何も話さなくていいさ。行く場所が無いなら、ここに居ればいい。どこか行きたいなら、好きにしろ。ここはそーゆー場所だ。・・・ただし。ここの人間を傷つけるやつは、誰だろうが俺は許さない」 

 

浮浪者「いいんですか・・・?」 

 

リー「そもそもこんな場所だ。良いも悪いもないだろう?」 

 

浮浪者「それは・・・そうですけど」 

 

ラーフ「お前たちも・・・何かあったのか?」 

 

リー「さぁな。話したくないことは話さない。さっき言っただろう。人のことを詮索をするな。それがここのルールだ」 

 

浮浪者「みんなそれぞれいろいろ抱えてるってことだよ。それ、食べないならもらってもいいかな?」 

 

ラーフ「た、食べるよっ・・・はむっ・・・うぐ・・・はむ・・・」 

 

リー「俺は少し出かける。そいつにここの事教えてやれよ」 

 

 

―――回想1終了(ラーフ20代半ば) 

エリサ「・・・そんなことって」 

 

ラーフ「12歳の男の子、育ち盛りの子供なんてのは金の無い奴からしたら邪魔な存在なんだよ。」 

 

エリサ「邪魔・・・。ねぇ。ラーフにとって・・・私って、邪魔じゃないの・・・?」 

 

ラーフ「さぁな」 

 

エリサ「さぁな、って・・・」 

 

ラーフ「お前が付いて来るって言いだしたんだろ」 

 

エリサ「じゃあ・・・やっぱり邪魔って・・・」 

 

ラーフ「はぁ・・・。役に立ってくれるんだろ?」 

 

エリサ「え・・・?」 

 

ラーフ「恩返し、するんだろ?」 

 

エリサ「うん!それは勿論よ!」 

 

ラーフ「それに、俺には5つ下の妹が居た。すごく可愛くてな・・・。あいつらは、俺じゃなく妹を選んだんだよ」 

 

エリサ「え・・・?妹、さん・・・?」 

 

ラーフ「あぁ。出来の悪い息子より、可愛い愛娘を選ぶ。今考えれば当然だよな」 

 

エリサ「ねぇ・・・その後はどうなったの?」 

 

ラーフ「その後?」 

 

エリサ「浮浪者たちが住んでるところに住むことになって、それからどうしたの?」 

 

ラーフ「別に・・・、適当に暮らしてただけだよ」 

 

エリサ「まだ列車はつかないわ。ね?良いでしょ?もう少し聞かせてよ」 

 

ラーフ「はぁ・・・」 

 

 

―――回想2(ラーフ15歳) 

リー「おう坊主。もうすっかりここの住人だな」 

 

浮浪者「最近じゃあ、娼館で小銭稼ぎまでしてきてるんですよ」 

 

ラーフ「俺にだって、金ぐらい稼げるんだよ」 

 

リー「ったく・・・。どこでそんな知識付けてきたんだか・・・」 

 

ラーフ「なぁ。リーさんが殺し屋って本当なの?」 

 

リー「はぁ?・・・おいっ」 

 

浮浪者「ひぃっ!・・・ち、違います!私は何も言ってませんよっ」 

 

ラーフ「本当なんだ・・・」 

 

リー「どこで聞いた?」 

 

ラーフ「娼館の客からだよ。この街に凄腕の殺し屋が住んでるって」 

 

リー「ちっ・・・」 

 

ラーフ「殺し屋って凄い稼げるんでしょ?なんでこんな所に住んでるんだよ?」 

 

リー「おい坊主。ここのルールを忘れたのか?」 

 

ラーフ「あ・・・、ごめん。詮索はしない、だよね。じゃあ!俺にも殺しを教えてよ!」 

 

リー「あ?何言ってんだ?」 

 

ラーフ「今度の仕事、連れてってよ!」 

 

リー「何のつもりだ・・・?」 

 

ラーフ「なんの・・・。役に立ちたいんだ。僕がこうして生きていられるのは、ここのみんなのおかげだよ。だから、みんなの役に立ちたい」 

 

リー「はっ、一丁前なこと言いやがって。なら、娼館でもっと稼げばいいだろ」 

 

ラーフ「そうじゃない・・・。リーさんみたいになりたいんだ。ここのみんなが安心して暮らせてるのは、リーさんがいるからなんだろ?街のみんなが怖がって近寄らないからなんだろ?」 

 

浮浪者「なぁ、リーさん。こいつの気持ちは本当だよ。娼館で稼いだ金も自分じゃ一切使わないんだ。仕事の邪魔はさせない。だから、殺し屋にはなれないって現実を見せるだけでもいいからさ。少し、付き合ってあげられないかな?」 

 

リー「お前まで、何を・・・」 

 

ラーフ「頼むよっ!言いつけは守る、邪魔にもならない!だからさっ」 

 

リー「・・・はぁ。勝手にしろ」 

 

ラーフ「いいの!?やったぁ!」 

 

リー「殺し屋がどんなものかは教えてやる。だが、死んでも知らないぞ」 

 

ラーフ「うん。分かってるよ。覚悟は出来てるよ」 

 

リー「違う。覚悟じゃない。生きることを誓うんだ」 

 

ラーフ「え?」 

 

リー「死ぬ覚悟なんかするな。そんなやつはすぐ死ぬんだ。生きようとしないからな」 

 

ラーフ「・・・わかった。僕は死なない!絶対に!」 

 

 

―――回想2終了(ラーフ20代半ば) 

エリサ「ラーフも・・・誰かを殺してたの・・・?」 

 

ラーフ「あぁ。依頼されればな。まぁ、その頃はまだ、師匠の手伝いしかさせてもらえなかったけどな」 

 

エリサ「そう・・・なんだ・・・」 

 

ラーフ「怖いか?」 

 

エリサ「ううんっ、大丈夫。ちゃんとラーフのこと知りたい」 

 

ラーフ「師匠は俺に何度も、何度も一つのことを言い聞かせた。『殺し屋はターゲットを殺すのが仕事だ。むやみに人を傷つけるな、それはただの殺人鬼でしかない』ってな」 

 

エリサ「殺人鬼?・・・同じじゃないの?」 

 

ラーフ「ははっ、俺もそう思ってた。殺してるんだから同じだろって・・・。それから、最後にこう続くんだ『絶対に私利私欲のために殺しをするな』」 

 

エリサ「私利私欲・・・」 

 

ラーフ「金が欲しけりゃ、金持ちを殺して奪えば手に入る。憎い相手を殺していけば、誰も自分に逆らわなくなる」 

 

エリサ「そうね・・・」 

 

ラーフ「でも、それは殺し屋じゃない。自分のために殺しをすれば、殺し屋じゃなくなるんだ」 

 

エリサ「そういうものなの・・・?」 

 

ラーフ「あぁ。・・・殺し屋って仕事に誇りを持ったカッコいい人だったよ、リーさんは」 

 

エリサ「私には、殺しがカッコいいとかはわかんないけど・・・。今はその人は?ラーフが育った場所はどうなったの?」 

 

ラーフ「・・・俺が、殺した」 

 

エリサ「え・・・?どういうこと?」 

 

ラーフ「殺し屋としてのいろいろなことを教わり、仕事を一緒にさせてもらい始めた頃だった・・・」 

 

 

―――回想3(ラーフ18歳) 

リー「どうだ?」 

 

ラーフ「今はダメだね。警戒がすごいや」 

 

リー「やっぱりか・・・」 

 

ラーフ「やっぱり?」 

 

リー「ここ最近、俺をつけまわしているやつがいる」 

 

ラーフ「え・・・?」 

 

リー「まだまだ未熟だな。自分の身は自分で守れないと殺し屋なんてなれないぞ?」 

 

ラーフ「うっ・・・」 

 

リー「殺し屋なんて仕事、どれだけの恨みを買っているかわからないんだ。常に警戒しておけよ」 

 

ラーフ「わ、わかってるよ!」 

 

リー「じゃあ、そろそろ行くぞ」 

 

ラーフ「え?今は無理だよ。警戒が強すぎるって」 

 

リー「ターゲットを殺せなくて何が殺し屋だ?」 

 

ラーフ「それは・・・」 

 

リー「予定ならこの後、衣装替えをするはずだ。そこを狙う。お前は、侵入ルートと逃走ルートの確保だ。いいな?」 

 

ラーフ「わかった。・・・死ぬなよ?」 

 

リー「死なせるなよ?」 

 

ラーフ「あぁ」 

 

 

ラーフ「すごい・・・。何回見ても、あの手際の良さ・・・」 

 

リー「状況は?」 

 

ラーフ「問題ないよ。予定通りのルートで―――ぐあっ!!!」 

 

リー「ん?どうした?何があった?」 

 

男2「やぁやぁ。こうして話をするのは初めまして、だね」 

 

リー「お前・・・」 

 

男2「まさか本当だったとはねぇ・・・。あのreaper(リーパー)が弟子を取ったなんて」 

 

リー「坊主に何をした・・・」 

 

男2「ほらほら、早くそこから逃げないと。警備に見つかっちゃうよー?」 

 

リー「坊主に手を出してみろ。貴様を地の果てまで追いかけるぞ」 

 

男2「おー、怖い。じゃあ、そうなる前にこっちの仕事を済まさないとだねぇ。会長の殺しを依頼をしているのは誰だ?」 

 

リー「なるほど、お前は会長の雇われか」 

 

男2「答えないなら、この子を殺してもいいんだよ?」 

 

リー「・・・・・・」 

 

男2「あれ?どこに行った・・・?逃走ルートは確かこっちのはずだよな・・・?いない・・・?なぜだ・・・?」 

 

ラーフ「リー・・・さん。僕はいいから・・・逃げて・・・」 

 

男2「うるさいっ!喋るなっ!」 

 

ラーフ「うぐっ・・・」 

 

リー「俺は後ろにいるぞ」 

 

男2「わぁ~お・・・。どんなマジックだい・・・?さっきまであっちの屋敷にいたはずなのにねぇ・・・」 

 

リー「坊主を離せ」 

 

男2「離してもいいよ?会長の依頼から降りてよ。殺しは不可能ですってさ」 

 

リー「その前にここで貴様を殺すぞ?」 

 

男2「大事なこの子が死んでもそれが出来るのかなぁ?」 

―――銃声 

リー「っ!やめろっ・・・ぐはっ・・・」 

 

ラーフ「リーさん!!!」 

 

男2「あのreaper(リーパー)も、最後はこんなもんか。じゃあね」 

―――銃声 

ラーフ「・・・リー・・・さん」 

 

 

―――回想3終了(ラーフ20代半ば) 

ラーフ「心臓と頭に1発ずつ。即死だったよ・・・」 

 

エリサ「そんな・・・」 

 

ラーフ「・・・俺のせいだ。ガキの俺は殺しの技術は身に着けて調子に乗っていた。自分を守る術すら知らないくせに・・・。ずっと師匠に守ってもらっていたんだ・・・」 

 

エリサ「ラー・・・フ・・・?」 

 

ラーフ「俺は無力だった。師匠を目の前で殺されて、殺した奴に何も出来ずに逃がした」 

 

エリサ「ラーフ・・・」 

 

ラーフ「半人前の殺し屋には何もできなかった・・・。だから、俺は殺し屋として一人前になることを誓った」 

 

エリサ「ねぇ!ラーフ!お願いっ!こっち見て!」 

 

ラーフ「ん?・・・あぁ、どうした?」 

 

エリサ「ううん・・・ちょっと怖かっただけ」 

 

ラーフ「・・・そうか。あまり思い出さないようにしていたからな」 

 

エリサ「もう大丈夫。なんでその時、殺し屋を辞めなかったの?」 

 

ラーフ「俺は力が欲しかったんだ。一人前の殺し屋にならなきゃいけなかった。だから、来た依頼は全部受けた。子供から死にかけの老人まで、依頼されれば誰でも殺した。そうしているうちに、いつしかハデスと呼ばれるようになっていたよ」 

 

エリサ「・・・なんでそんなことをしたの?」 

 

ラーフ「・・・復讐。師匠を殺した奴に復讐するために、力が欲しかった。ただのガキじゃ、情報すら集められなかったからな」 

 

エリサ「それって・・・」 

 

ラーフ「あぁ、師匠の教えを破ったんだ。俺は、自分のために、憎しみで殺しをしようとした・・・」 

 

エリサ「どう・・・なったの?」 

 

ラーフ「復讐は成功したよ。・・・あいつも、あいつの家族も、全員俺が殺した」 

 

エリサ「そっか。よかった・・・のかな?」 

 

ラーフ「ははっ・・・。師匠の仇を打てたんだ。そのために何年もかけたんだ。最高の気分だったよ・・・。最後の1人を殺すまではな・・・」 

 

エリサ「最後の、1人?」 

 

ラーフ「・・・こんな偶然。最悪の再会なんて誰が想像できたんだろうな」 

 

エリサ「え?なんの話?」 

 

 

―――回想4(ラーフ22歳) 

男2「お前・・・あの時のガキか・・・?」 

 

ラーフ「やっと・・・。やっとだ」 

 

男2「ハデス・・・お前、ハデスだな!?あの無能のガキが・・・この俺を殺そうってか!?」 

 

ラーフ「お前は俺の師匠を殺した。・・・なのにお前は、嫁も子供もいるなんてな」 

 

男2「誰の依頼だ!?俺はもう殺し屋は引退したんだっ!金か!?金なら払う、いくらだ?」 

 

ラーフ「耳障りだ。・・・死ね」(ナイフで切る) 

 

リア「きゃぁっ!!」 

 

ラーフ「あとはお前だ。お前に直接恨みはないが・・・」 

 

リア「や、やめて・・・こないで・・・」 

 

ラーフ「悪いな。恨むなら、殺し屋なんてしてた旦那を恨むんだな」 

 

リア「えっ、おにい・・・きゃぁっ!」(首をナイフで切られる) 

 

ラーフ「・・・ちっ、避けると余計に苦しむだけだぜ?」 

 

リア「くっ・・・はぁ・・・。ねぇ・・・あなた・・・。お兄様・・・でしょ?」 

 

ラーフ「っ!?」 

 

リア「やっぱり・・・ラーフ兄様・・・よね?」 

 

ラーフ「お前はっ・・・」 

 

リア「リア・・・よ・・・。覚えてない?」 

 

ラーフ「リ・・・ア・・・。うそ・・・だ・・・。嘘だ!嘘だ!リアがこんなところにいるはずがない!!!」 

 

リア「お兄様・・・。もう殺しなんて・・・やめて・・・。今のお兄様・・・辛そうだよ・・・」 

 

ラーフ「だめだっ!リア!しっかりしろ!リア!」 

 

リア「・・・最後に、会えてよかった」 

 

ラーフ「死ぬな!死ぬなリア!」 

 

リア「お兄様・・・だい・・・す・・・」 

 

ラーフ「リアぁぁぁあああ!!!」 

 

 

―――回想4終了(ラーフ20代半ば) 

エリサ「ラーフが前にここに来たのって・・・。妹さんのお墓があったんだね」 

 

ラーフ「あぁ」 

 

エリサ「ここに眠ってるんだね・・・」 

 

ラーフ「あぁ」 

 

エリサ「・・・あっ、私ちょっと喉乾いちゃったっ!さっきのとこで売ってたから行ってくるね!」 

 

ラーフ「あぁ・・・。・・・あいつなりの精一杯の気遣いのつもりなんだろうな。でも、今は素直に感謝だな」 

 

ラーフ「なぁ、リア。今の俺を見たらなんて言ってくれるんだ?怒るか?いや、昔みたいに笑ってくれるか?」 

 

ラーフ「・・・別に、許してもらおうなんて思っていない。こんなことをしても、なんの罪滅ぼしにもならないことも分かってる。これはただの自己満足。俺のエゴだ。・・・でも、見守ってくれると嬉しい。俺はこれからあいつを、一人前にする。普通じゃない俺に、普通の幸せを教えてやることが出来るかはわかんないけどな・・・」 

 

 

 

ラーフ「じゃあ、またな。今度は、もっと近いうちに来るよ」 

 

 

 

エリサ「おーそーいー!ラーフの分も買ってたのにー。もうぬるくなっちゃってるよー?」 

 

ラーフ「あぁ、悪い悪い。ありがとな」 

 

エリサ「えへへ。ちゃんと話せた?」 

 

ラーフ「あぁ、リアのおかげでな」 

 

エリサ「あ・・・」 

 

ラーフ「リア、何突っ立ってんだ?花畑。行くんだろ?」 

 

エリサ「やっと呼んでくれたね!私の名前っ!」 

 

ラーフ「おいっ、引っ付くなっ」 

 

エリサ「だめー?お兄ちゃん」 

 

ラーフ「やめろ」 

 

リア「お兄様、ずっと大好きです」 

 

ラーフ「っ・・・」 

 

 

 

 

 

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